1959年生まれのピエール・クンツは、フランク・ミュラーのウォッチランド社でその才能を見出された現代の天才時計師です。2002年には自身の名を冠した「ピエール・クンツ」ブランドを立ち上げて以降、次々と野心的な時計を生み出しています。

ピエール・クンツで有名なのは、なんといっても針が反復運動することで時刻やカレンダー表示を行うレトログラード機構です。ブランドのモットーに「スピリット・オブ・チャレンジ」という言葉を掲げているように、伝統にとらわれないユニークなコンセプトとデザインが彼の時計にはよく表れています。

2007年に発表された「インフィニティ ルーピング」は、ピエール・クンツの革新的な独創性が表れた逸品です。バラの花のような形状の文字盤上には、小さな赤い針が1本しかありませんが、この針が真ん中の歯車に沿ってローリングしながら時刻を示すという、今までの時計とはまったく異なるコンセプトを持った腕時計です。分針や時針といった区別がなく、1本の針が、一筆書きを描くように記された時刻表示の目盛りを指し示します。この針自体もゆっくり回転して、まるで宙返りのように逆向きになりながら移動していくという複雑な機構になっています。

この時計は複雑時計として極めて精密に計算されて作られていますが、細かい時刻を瞬時に正確に読み取ることには向いているとは言い難いです。それよりも、針のユニークな動きが描く時の流れにゆったりと身を任せて、その時その時をゆとりをもって楽しもうというコンセプトに主眼が置かれています。

この「インフィニティ ルーピング」は、直径44mmの自動巻き時計で、ケースは18Kグレイゴールド・ケースです。定価299万2500円と高級時計としてもなかなかの値段ですが、スポーツウォッチ・バージョンは152万2500円とやや廉価になっています。スポーツウォッチ・バージョンは、ステンレススティールのケースと、赤と黒の文字盤が特徴的です。グリーンとイエローという組み合わせもあります。