スイス時計の高級ブランドとして、日本でも広く知られるのがオメガです。その歴史は1848年のルイ・ブラン兄弟会社の創業までさかのぼります。オメガというブランド名が誕生したのは1894年です。ギリシア語のアルファベットの最後の文字「Ω」を取った理由は、時計業界の究極にして最後の存在になるという意志の表れでしょう。1903年に、正式にオメガと社名を改めてからは、本格時計のメーカーとして数々の精度コンクールで記録を打ち立てたり、オリンピックの公式計時を務めたりなどして、「精密時計といえばオメガ」という地位を確立しました。

第二次大戦後には、現代まで受け継がれる名品が続々と開発されました。防水仕様の「シーマスター」、コンクールで優秀な成績を修めた「コンステレーション」、ダイバーズウォッチの「シーマスター300」などが有名ですが、なかでも特に傑作として今も語り継がれるのが「スピードマスター」です。1969年の人類初の月面着陸時に宇宙飛行士が装着していたことで世界的に知られました。

初代のスピードマスターは、制度に定評あるキャリバー1861をムーブメントに搭載し、60秒、30分、12時間という標準的な3カウンターのクロノグラフでした。この時計は、NASAが実施した宇宙の過酷な環境をシミュレートしたテストにおいて、他社のクロノグラフを押しのけて唯一合格を果たしました。しかも、テスト用に特別に作られたものではなく、ふつうに売られている市販品だったことから、オメガの時計作りの優秀さが並外れて高いことを世界的に証明した形となりました。

こうした経緯でNASAに採用されて以来、スピードマスターは、プロの厳しい要求にも応える時計という意味で、製品名を「スピードマスター・プロフェッショナル」と改めて、現在も同じデザインで生産が続けられています。つまり、宇宙飛行士が実際に使っている腕時計と同じものが、誰でも簡単に店頭で買えるわけです。