現在の腕時計にも見られるクロノグラフとは、1秒以下の単位で時間を計測することのできるストップウォッチの機能のことです。この機能は、1880年代にスイスで懐中時計に搭載されるようになったのが始まりです。タグ・ホイヤーはそんなクロノグラフのスペシャリストとして1860年の創業以来、150年以上も高い名声を博しています。1887年には、現在でも機械式クロノグラフとして主要な時計メーカーが採用する、カップリング機構である「振動ピニオン」で特許を取得しています。このことは、タグ・ホイヤーの初期の重要な功績の一つです。

タグ・ホイヤーは、1916年には、世界で初めて100分の1秒単位で時間が計測できる機械式のストップウォッチを発表しました。その高い技術が認められ、オリンピックの公式サプライヤーを務めたこともありますが、ハイテクな電子機器で微細な時間を計測するようになるはるか前のことです。また、タグ・ホイヤーは、腕時計が主力製品になってからも、クロノグラフを搭載したモデルに注力し、さまざまな製品を開発してきました。また、モータースポーツとも深く関わるようになり、車載用ダッシュボードのクロノグラフの開発など、現在のF1レースに至るまで、いくつものカーレースに因んだ腕時計を生み出しています。

タグ・ホイヤーのなかでも特に有名なのが、1964年に発表された「カレラ」です。その特徴は、タグ・ホイヤーの代名詞であるクロノグラフ機構だけでなく、モダンに洗練されたデザインです。長く伸びたラグ、シンプルな文字盤は、さながら現代建築の機能美と言ってもよく、それまでにはない斬新なイメージを腕時計の世界にもたらしました。

タグ・ホイヤーは、他にもモータースポーツに関わるクロノグラフをいくつも生み出しています。1969年に発表された「モナコ」、1974年に発表された「シルバーストーン」など、「カレラ」と同様、革新的なデザインの導入に挑み、時代を超越したもはや古典と言ってもよい傑作です。