2月11日付朝日新聞朝刊で、仮想通貨は「価値の裏付けのない電子データ」、「日本円などの法定通貨との大きな違いは、その価値の裏付けがあるからだ。日本円は国の信用や経済をバックに価値が決まる。仮想通貨には具体的な裏付けがない。」と報道された。
また2月22日付日本経済新聞にも仮想通貨は価値の裏付けのない旨、掲載されました。
しかし、これは考え方の違いだと言いたいです。日本円などの法定通貨に価値の裏付けがあるというのは、中央銀行により管理されていてその国の経済力があるため、価値の裏づけがあるとしています。
いざという時にそもそも中央銀行の管理など、当てになるのでしょうか。
たとえば、日本は戦後にハイパーインフレが起き、物価が戦前の約180倍になりました。また国債暴落による財政破綻のリスクだって残っています。つい最近の例だと、他国ではジンバブエのハイパーインフレがあり、物価が数年間で何と2億倍になったのです。
当然ですが、インフレが起きても、所得の上昇が物価の上昇に伴っていれば問題ありません。しかし、物価が100倍になるような急激なインフレが起こる場合、所得がその上昇に追いつかず、通貨の価値がなくなるため、生活が苦しくなるのです。
しかも仮想通貨に価値の裏付けがないと言いますが、その時の需要と供給で決まり、円と米ドルの取引で値段が決まるのと同じように、仮想通貨にも値段が付けられます。仮想通貨は、決して価値の裏付けのない通貨ではありません。
仮想通貨は法定通貨とは異なり、両替なども必要とせず、理論的には、世界中で使用することが可能です。その点を考えれば、今後仮想通貨が使用できる店舗などは増加して行くと思います。確かに国や中央銀行のバックはありません。日本円であれば、中央銀行である日本銀行が円を管理しています。仮想通貨には中央銀行はないですが、管理者である国や中央銀行がないことこそが、仮想通貨の強みです。
仮想通貨の安全性に不安を持っている方者もいるかもしれません。しかし、仮想通貨ほど安全な通貨はないと思います。
仮想通貨はブロックチェーンとう技術が基になっている通貨です。ブロックチェーンとは、暗号技術を組み合わせて構築された分散型台帳です。ブロックチェーンのアカウントを発行し、ネットワークに参加すれば取引記録を閲覧することすら可能で、特定の管理者が存在しません。
特定のコンピュータに障害が起きても、数ある管理者の一つのコンピュータに過ぎないため、ブロックチェーンに不具合は起きません。つまりブロックチェーンはネットワーク障害には非常に強いのです。
安全だと言っても、コインチェック社から仮想通貨が流出した事件を挙げる方もいるかもしれません。しかし、それはあくまでも、コインチェック社という仮想通貨取引所のセキュリティ管理に問題があり、流出が起きました。つまり、その原因はコインチェックの社内体制にあり、仮想通貨のセキュリティに問題がある訳ではありません。
銀行に預金し、その銀行からお金が流出したのと同じことです。銀行からお金が流出したから、日本円は不安定な通貨だという人はいないでしょう。
今後仮想通貨がメジャーな通貨になるためには、取引所のセキュリティ(コールドウォレット、マルチシグネチャ)と保有者のセキュリティ(ソフト、ハードウェアウォレットなど)をしっかりと確保する必要があると思います。
なお、通貨の基本的な機能は、交換手段、価値の尺度、価値の保存だと言われています。これを金銀に例えるのならば、探鉱、採鉱、選鉱、精錬という経済資源の対価、一方ビットコインなどの暗号通貨はブロックチェーンを計算する電力という対価が必要です。ビットコインには発行上限があり金銀同様に希少性があると思います。
しかしながら価値尺度の点で、現在価格変動が激しく投機的となっており残念です。近い将来、日銀デジタル通貨より、むしろ政府から中立した機関等が管理する次世代型仮想通貨の登場が望ましいと思います。